相続人全員が相続放棄したら、残った財産や借金はどうなる?「相続財産清算人」とは
こんなお悩みはありませんか?
「子ども全員で相続放棄した。これで終わり?誰にも相続されなかった財産はどうなる?」
「借金があるが、相続人全員が放棄すれば債権者は諦めるしかない?」
「相続財産清算人という言葉を聞いたが、何をする人なのかわからない」
相続人全員が相続放棄すると「誰も相続しない」状態になりますが、だからといって財産や借金がそのまま消えるわけではありません。残った財産・借金は「相続財産清算人」が管理・清算し、最終的に国庫(国)に帰属します。
この記事では、全員放棄した後に何が起きるのか、清算人はどのように動くのか、そして見落としがちな「子全員が放棄しても全員放棄にはならないケース」まで解説します。
📋 この記事でわかること
「子全員が放棄=全員放棄」ではない理由(相続順位の問題)
全員放棄後の財産・借金の行方(相続財産法人→国庫帰属)
相続財産清算人とは何か・何をする人か
清算の流れと最低期間(2023年改正後)
清算人が選任されないケースと注意点
目次
まず確認:「子全員が放棄」はまだ全員放棄ではない
「子ども3人全員で相続放棄した。これで完全に終わり」と思っていても、法的にはそうではないケースがあります。
相続には順位があり、ある順位の相続人が全員放棄すると、次の順位の相続人に相続権が移ります。順位の詳細については相続放棄の順位の解説記事も参考にしてください。
相続順位の確認
第1順位:子・孫(直系卑属)
第2順位:父母・祖父母(直系尊属)
第3順位:兄弟姉妹・甥・姪
※配偶者は常に相続人(順位なし)
具体例
父が死亡し、子ども3人全員が相続放棄をした。しかし父の母(祖母)が存命の場合、祖母が第2順位として新たな相続人になる。祖母が相続放棄をしなければ、借金を含む相続財産を引き受けることになる。
子全員が相続放棄した場合には、第2・第3順位の親族に「相続放棄した」旨を連絡することで、「何で知らせてくれなかったんだ」というトラブルを回避することができます。
全相続人が相続放棄した後の財産・借金の行方
第1〜第3順位の相続人全員が相続放棄し、配偶者も相続放棄(または配偶者がいない)場合は「相続人不存在」の状態になります。この場合、被相続人の財産と借金は「相続財産法人」として取り扱われます。
プラスの財産(不動産・預貯金など)の行方
相続財産清算人が管理・換価(売却など)し、借金の返済に充てる。清算後に残った財産は、特別縁故者への分与を経て、最終的に国庫に帰属する。
マイナスの財産(借金・ローンなど)の行方
債権者は相続財産清算人を通じて、プラスの財産の範囲で弁済を受ける。プラスの財産を上回る借金は回収できず、債権者は損失を受けることになる。相続人に請求することはできない。
相続財産清算人とは何か
相続財産清算人とは、相続人が不在になった場合に、家庭裁判所が選任する財産の管理・清算担当者です(民法952条)。主に弁護士や司法書士などの専門家が就任します。
その主な役割は次の通りです。
▶相続財産(プラス・マイナス)の調査と管理
▶不動産などの財産の換価(売却)
▶債権者への弁済(プラスの財産の範囲で)
▶特別縁故者(内縁の配偶者など)への財産分与
▶残余財産の国庫帰属手続き
重要な点は、相続財産清算人は自動的に選任されるわけではないということです。利害関係人(主に債権者や特別縁故者)が家庭裁判所に申立てを行う必要があります。申立てがなければ、清算人は選任されません。
清算の流れ(2023年改正後)
2023年4月の民法改正により、従来は順次行う必要があった複数の公告を統合・並行して実施できるようになり、権利関係の確定までに最低限必要な期間が短縮されました(旧制度:10か月以上→改正後:6か月以上)。
STEP 1相続財産清算人の選任申立て
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立て。申立費用:収入印紙800円+郵便切手約2,000円+官報公告料約5,000円。予納金が必要な場合は数十万〜100万円程度。
STEP 2清算人選任及び相続人捜索の公告
清算人選任が官報に掲載される。潜在的な相続人がいれば申し出るよう促す(6か月以上の公告期間)。
STEP 3債権者・受遺者への請求申出の公告及び催告・弁済
債権者に申出を促す公告(2か月以上)。届出のあった債権者に対してプラスの財産の範囲で弁済。
STEP 4特別縁故者への財産分与(必要な場合)
特別縁故者(内縁の配偶者・献身的な介護者など)は、STEP2の公告期間満了後、3か月以内に申立。申立てを受けて家庭裁判所が分与を決定。
STEP 5残余財産の国庫帰属
特別縁故者への分与を経てもなお残った財産(不動産・預貯金など)は国庫に帰属して手続き終了。
清算人が選任されないケースと注意点
清算人の選任申立てを誰も行わない場合、財産はずっと宙に浮いた状態になります。たとえば、プラスの財産がほとんどなく借金だけが残るような場合、債権者は予納金を支払ってまで申立てをするメリットがないため、清算人が選任されないことがあります。
⚠️清算人が選任されないと起きること
・不動産の名義が被相続人のまま放置される
・占有していた相続人は保存義務(管理義務)を負い続ける
・空き家が特定空家等に指定されるリスクも残る
空き家が放置され、倒壊の危険や衛生上有害な状態となると、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき「特定空家等」に認定されるリスクがあります。
特定空家等に認定されると、市区町村長から修繕や解体等の助言・指導、勧告、命令を受けることがあり、これに従わない場合は行政代執行による強制執行や費用の負担を求められる可能性があります。
相続放棄をした占有者は、同法上の「管理者」にあたると考えられており、清算人が選任されて管理を引き継ぐまでは、適切な管理に努める義務を負います。
全員放棄後も「保存義務」が残るケースがある
2023年4月の民法改正により、相続放棄後の保存義務は「放棄の時点で財産を現に占有していた者」に限定されました。同居していた・事実上管理していたなどの事情がある場合は、清算人または次の相続人に引き渡すまでの間、保存義務を負います。
遠方に住んでいて実家を占有していなかった場合は保存義務が生じない場合が多いですが、判断が難しい場合は弁護士に確認することをお勧めします。詳しくは実家を相続放棄しても管理責任は残る?の解説記事もご参照ください。
まとめ
▶子全員が放棄しただけでは「全員放棄」にならない。次順位(親・兄弟姉妹)に相続権が移る
▶全相続人が放棄すると「相続人不存在」となり、財産・借金は相続財産法人となる
▶相続財産清算人は財産の管理・清算を行う(主に弁護士・司法書士)
▶清算人は自動的には選任されず、利害関係人(債権者など)の申立てが必要
▶清算の手続きには最低でも6か月以上かかる(2023年改正で短縮)
▶清算後に残った財産は国庫に帰属する。借金が財産を上回る部分は債権者の損失となる
▶放棄後も占有者には保存義務が残る。逃れるためには清算人の申立てと引き渡しが必要
「全員が放棄すれば解決」と思われがちですが、放棄後にも保存義務が残ったり、特定空家等の指定のリスクがあります。相続放棄をすると実家がどうなってしまうか心配だという方も多いと思います。
そのようなお悩みについては、一度弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
家族全員での相続放棄はご相談ください
次順位への通知はどうしたらよいか、実家の管理はどうなるのか。
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