2024.06.04更新
後遺障害11級とは?認定基準や慰謝料の相場、逸失利益について解説!
目次
- 後遺障害11級1号|両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
- 後遺障害11級2号|両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
- 後遺障害11級3号|1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
- 後遺障害11級4号|10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
- 後遺障害11級5号|両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
- 後遺障害11級6号|1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 後遺障害11級7号|脊柱に変形を残すもの
- 後遺障害11級8号|1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
- 後遺障害11級9号|1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
- 後遺障害11級10号|胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
交通事故の怪我の内容や程度によっては、治療を続けても完治せずに後遺症が残ってしまうことがあります。このような後遺症については、後遺障害等級認定の申請を行うことで、症状に応じた等級認定を受けられる可能性があります。
今回は、後遺障害11級の認定基準や慰謝料相場、逸失利益などについてわかりやすく解説します。
後遺障害11級とは
後遺障害11級は、どのような場合に認定されるのでしょうか。以下では、後遺障害11級の基本事項と認定基準を説明します。
後遺障害11級の基本事項
交通事故で後遺症が残ってしまった場合、一定の要件を満たせば、後遺障害等級が認定されます。交通事故の後遺障害は、1級から14級まであり、数字が小さいほど重い後遺障害になります。
後遺障害11級は、具体的な症状に応じてさらに1号から10号まで分かれています。症状に応じて認定基準も異なりますので、適正な後遺障害認定を受けるためにも、各症状に応じた認定基準をしっかりと理解しておきましょう。
後遺障害11級の認定基準
後遺障害11級の認定基準を症状ごとにまとめると、以下の表のようになります。
後遺障害11級の認定基準 | |
---|---|
等級 | 認定基準 |
1号 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
2号 | 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
3号 | 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
4号 | 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
5号 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
6号 | 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
7号 | 脊柱に変形を残すもの |
8号 | 1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの |
9号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの |
10号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
この認定基準だけではどのような症状で後遺障害11級が認定されるかイメージしづらいと思いますので、次章では各症状に応じた詳細な認定基準を説明します。
後遺障害11級が認められる症状
後遺障害11級の認定基準は、1号から10号までの症状に応じて、さらに細かい認定基準が定められています。以下では、症状ごとの詳細な認定基準を説明します。
後遺障害11級1号|両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
眼球に著しい調節機能障害を残すものとは、調節力(ピントを合わせる機能)が通常の場合の2分の1以下になった状態をいいます。
眼球に著しい運動障害を残すものとは、注視野(頭部を固定し、眼球を運動させて直視できる範囲)の広さが2分の1以下になった状態をいいます。
後遺障害11級2号|両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
まぶたに著しい運動障害を残すものとは、目を開けても瞳孔領(黒目の中心)がまぶたで完全に覆われてしまう状態、または、目を閉じても角膜(黒目)を完全にまぶたで覆うことができない状態をいいます。
後遺障害11級3号|1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
まぶたに著しい欠損を残すものとは、まぶたの欠損により目を閉じたときに角膜(黒目)を完全に覆うことができない状態をいいます。
後遺障害11級4号|10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
歯科補綴とは、現実に喪失または著しく欠損した歯に対して、入れ歯、インプラント、ブリッジ、クラウンなどで補綴することをいいます。交通事故により、10本以上の歯に歯科補綴を加えた場合には、後遺障害11級4号が認定されます。
後遺障害11級5号|両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったものとは、両耳の平均純音聴力レベルが40㏈以上になった状態をいいます。
後遺障害11級6号|1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったものとは、以下のいずれかの状態をいいます。
- 片耳の平均純音聴力レベルが70㏈以上80㏈未満の状態
- 片耳の平均純音聴力レベルが50㏈以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下の状態
後遺障害11級7号|脊柱に変形を残すもの
脊柱に変形を残すものとは、以下のいずれかに該当するものをいいます。
- せき椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
- せき椎固定術が行われたもの(移植した骨がいずれかのせき椎に吸収されたものを除く)
- 3個以上のせき椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの
後遺障害11級7号は、頚椎や胸椎、腰椎といった首・腰・背骨(脊椎)を圧迫骨折した場合に認定されることが多い後遺障害等級です。
後遺障害11級8号|1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
指を失うとは、おや指以外の指については近位指節間関節以上(第2関節よりも先)を失った状態をいいます。
交通事故により、ひとさし指、なか指、くすり指のいずれか1本を失うと、後遺障害11級8号が認定されます。
後遺障害11級9号|1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
足指の用を廃したものとは、以下のいずれかに該当するものをいいます。
- 第1の足指(おや指)の末節骨(指先の骨)の長さの2分の1以上を失ったもの
- 第1の足指(おや指)以外の足指を中節骨もしくは基節骨を切断したものまたは遠位指節間関節もしくは近位指節間関節において離断したもの
- 中足指節関節または近位指節間関節(第1の足指(おや指)にあっては指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されるもの
片足のおや指を含む2本以上の指に上記の症状が残った場合、後遺障害11級9号が認定されます。
後遺障害11級10号|胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
胸腹部臓器の機能に障害を残すとは、胸腹部臓器の種類に応じて、以下のような症状をいいます。
胸腹部臓器の種類 | 認定基準 |
---|---|
呼吸器 | 動脈血酸素分圧が70Torrを超え、動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないもの |
スパイロメトリーの結果が%1秒量35以下または%肺活量40以下で、軽度の呼吸困難が認められるもの ・軽度の呼吸困難とは、呼吸困難のため、健常者と同様には階段の昇降ができないものをいう |
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スパイロメトリーの結果が%1秒量35を超え55以下または%肺活量40を超え60以下で、軽度の呼吸困難が認められるもの | |
スパイロメトリーの結果が%1秒量55を超え70以下または%肺活量60を超え80以下で、高度・中等度・軽度の呼吸困難が認められるもの ・高度の呼吸困難とは、呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないものをいう ・中等度の呼吸困難とは、呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同様には歩けないが、自分のペースでなら1㎞程度の歩行が可能であるものをいう |
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循環器 | 心機能の低下による運動耐容能の低下が軽度であるもの |
房室弁または大動脈弁を置換したもの(継続的に抗凝血薬療法を行うものを除く) | |
大動脈に偽腔開存型の解離を残すもの | |
消化器 | 胃に消化吸収障害、ダンピング症候群または胃切除術後逆流性食道炎のいずれかが認められるもの |
小腸を大量に切除し、残存する空腸および回腸の長さが100cmを超え300cm未満となったものであって、消化吸収障害が認められるもの | |
小腸または大腸に皮膚瘻が残り、瘻孔から少量ではあるが明らかに小腸または大腸内容が漏出する程度のもの | |
小腸または大腸の狭窄を残すもの | |
大腸を大量に切除したもの | |
便秘を残すもの(用手摘便を要するものを除く) | |
常時おむつの装着は必要ないものの、明らかに便失禁があると認められるもの | |
慢性肝炎 | |
膵臓の外分泌機能または内分泌機能の障害のいずれかが認められるもの | |
腹壁瘢痕ヘルニア、腹壁ヘルニア、鼠経ヘルニア、内ヘルニアを残し、重激な業務に従事した場合など腹圧が強くかかるときにヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの | |
泌尿器 | 腎臓を失っていないが、GFRが50ml/分を超え70ml/分以下のもの |
片側の腎臓を失い、GFRが70ml/分を超え90ml/分以下のもの | |
外尿道口形成術を行ったもの | |
尿道カテーテルを留置したもの | |
膀胱機能障害により、残尿が50ml以上100ml未満であるもの | |
尿道狭窄により排尿障害を残し、糸状ブジーを必要とするもの | |
切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁を残し、常時パッド等の装着は要しないが、下着が少しぬれるもの | |
頻尿を残すもの(以下のいずれにも該当するもの) ・器質的病変による膀胱容量の器質的な減少又は膀胱若しくは尿道の支配神経の損傷が認められること ・日中8回以上の排尿が認められること ・多飲等の他の原因が認められないこと |
後遺障害11級の慰謝料の相場
後遺障害慰謝料の算定基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)の3つがあります。各算定基準により後遺障害慰謝料の金額が異なりますので、以下では、各基準に基づく後遺障害11級の慰謝料の相場を説明します。
自賠責基準
自賠責基準とは、自賠責保険から後遺障害慰謝料が支払われる際の算定基準です。自賠責保険は、交通事故被害者に対する最低限の補償を目的とした保険ですので、補償内容も3つの基準の中では、最も低い金額になります。
後遺障害11級が認定された場合の慰謝料は、136万円と定められています。
任意保険基準
任意保険基準とは、加害者が加入する任意保険が独自に定めた慰謝料の算定基準です。任意保険基準の内容については、一般に公開されておらず、保険会社によって算定基準が異なるため、詳細な金額は不明です。一般的には、自賠責基準と同程度か若干上乗せされた程度の金額になります。
弁護士基準(裁判基準)
弁護士基準とは、過去の交通事故裁判例などの蓄積により形成された慰謝料の算定基準です。弁護士基準は、弁護士が示談交渉などで用いる基準になりますが、裁判になった場合に裁判所が使用する基準であることから「裁判基準」とも呼ばれます。裁判基準は、3つの算定基準の中でもっとも慰謝料が高額になる基準です。
後遺障害11級が認定された場合には、420万円が弁護士基準(裁判基準)の相場です。
後遺障害11級の逸失利益
逸失利益とは、交通事故により後遺障害が残らなければ将来得られたはずの利益をいいます。以下では、後遺障害11級が認定された場合の逸失利益について説明します。
後遺障害11級の逸失利益の計算方法
後遺障害逸失利益は、以下のような計算式より算出します。
後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
①基礎収入
基礎収入とは、基本的には事故前1年間の収入をいいます。
サラリーマンであれば事故前年の源泉徴収票の「支払金額」、または所得証明書の「給与支払額」欄記載の金額が基礎収入になります。収入のない主婦(主夫)でも家事労働を「仕事」と評価できますので、賃金センサスの女性労働者の全年齢平均(産業計・企業規模計・学歴計)が基礎収入になります。
②労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、後遺障害により低下した労働能力を数値化したものになります。労働能力喪失率は、後遺障害等級ごとに定められており、後遺障害11級の場合は、20%が労働能力喪失率となります。
③労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
労働能力喪失期間とは、後遺障害により労働能力が失われる期間のことをいいます。原則として症状固定時の年齢から67歳までの年数が労働能力喪失期間になります。ただし、以下のような例外もありますので注意が必要です。
- 18歳未満の子ども……18歳から67歳までの年数
- 大学生……大学卒業時から67歳までの年数
- 67歳までの期間が短い人……67歳までの年数と平均余命の2分の1の年数のうち長い方
- 67歳を超える高齢者……平均余命の2分の1の年数
ライプニッツ係数とは、逸失利益が一括で支払われることで発生する利息(中間利息)を控除するための数値で、国土交通省のサイト[y1] により確認することができます。
後遺障害11級の逸失利益が認められない場合
後遺障害逸失利益は、後遺障害が残ってしまったことによる将来の減収分を補填するものになります。よって、後遺障害逸失利益が認められるためには、原則として後遺障害により減収が生じたまたは減収が生じる可能性があることが必要です。
ただし、減収がなかったとしても、以下のような特段の事情がある場合には、逸失利益が認められる可能性があります。
- 本人の努力や勤務先の特別な配慮により収入を維持している
- 将来、昇進や昇給などにおいて不利益が生じる可能性がある
また、被害者が働いておらず現実の収入がない場合には、原則として逸失利益は認められませんが、労働の意欲と能力があり、就職する蓋然性が高いと認められれば、現実に収入がなかったとしても逸失利益を請求できる可能性があります。
編集部まとめ
後遺障害11級の認定を適切に受けるためには、症状に応じた認定基準を理解していなければなりません。認定された等級に応じて後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の金額が異なりますので、適正な賠償金の支払いを受けるためにも、専門家である弁護士のサポートが必要になります。
交通事故の被害に遭われた方は、弁護士法人せせらぎ法律事務所東京立川支所までお気軽にご相談ください。
この記事の監修
弁護士代表
飛田 貴史(とびた たかし)
この記事の監修
弁護士代表 飛田 貴史(とびた たかし)
所属弁護士会 | 第二東京弁護士会 |
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登録番号 | 46497 |
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