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認知症の相続人がいる場合の相続放棄|成年後見制度が必要になるケースとは

こんなお悩みはありませんか?

「相続人のひとりが認知症で、本人では相続放棄ができない。どうすればいい?」

「成年後見人を立てれば相続放棄できると聞いたが、必ず放棄してもらえるの?」

「3か月の期限が迫っているが、成年後見人の選任が間に合うか不安」

相続人の中に認知症の方がいる場合、通常の相続放棄の手続きに加えて、成年後見制度の利用が必要になるケースがあります。しかし、成年後見人を立てれば必ず相続放棄ができるわけではありません。成年後見人が「放棄しない」と判断するケースもあります。

この記事では、認知症の相続人がいる場合の相続放棄の方法・注意点・利益相反の問題を弁護士がわかりやすく解説します。

📋 この記事でわかること

なぜ認知症の相続人は自分で相続放棄できないか

成年後見制度を使った相続放棄の手続きの流れ

成年後見人が「放棄を認めない」ケースとその理由

利益相反で親族が成年後見人になれないケース

3か月の期限と成年後見人選任のタイミング問題

認知症の相続人は自分で相続放棄できない

相続放棄は法律行為のひとつです。法律行為を有効に行うためには、「意思能力」(物事を判断・理解できる能力)が必要です。

認知症によって意思能力が著しく低下している状態では、本人が「相続放棄する」という意思表示を有効に行うことができません。意思能力のない状態でなされた相続放棄の申述は、法的に無効です。

そのため、認知症の相続人が相続放棄するには、成年後見人を選任し、成年後見人が本人に代わって手続きを行う必要があります。

⚠️軽度認知症の場合は本人手続きが可能なことも

認知症の程度が軽度で判断能力がある程度保たれている場合は、本人が相続放棄の手続きをできる場合もあります。ただし保佐人が付いている場合は必ず同意が必要です。また補助人が付いている場合は同意が必要になることがあります。

解決策:成年後見制度を利用して後見人に代理してもらう

成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が不十分な方を保護・支援するための制度です。家庭裁判所に申し立てることで、成年後見人が選任され、本人に代わって法律行為を行うことができます。

手続きの流れ

STEP 1成年後見開始の審判を申し立てる

認知症等の方(本人)の住所地を管轄する家庭裁判所に申立て。申立人は本人・配偶者・四親等内の親族など。

STEP 2審判・成年後見人の選任

裁判所が申立書類の審査、申立人等の面接、調査官の調査、親族への照会、鑑定などを行い審理し、成年後見の開始を審判し、最も適任と思われる成年後見人を選任する。

STEP 3後見人が相続放棄を申述する

選任された成年後見人が、認知症の方(成年被後見人)に代わって家庭裁判所へ相続放棄の申述を行う。

費用の目安

申立て手数料(収入印紙):800円

登記手数料:2,600円

郵便切手代:3,000円程度

医師の鑑定が必要な場合:5〜10万円程度

成年後見人(専門家)への報酬:月2〜5万円程度(裁判所が決定)

重要な点として、後見は一度始まると相続放棄が終わった後も原則として継続します。認知症の方が亡くなるまで、成年後見人が財産管理や契約締結などを行っていくことになります。

重要:後見人が「相続放棄を認めない」ケースがある

成年後見人の役割は「被後見人(認知症の方)の利益を守ること」です。そのため、成年後見人が相続放棄を必ず行うとは限りません。

❌ 成年後見人が相続放棄を認めないケース

マイナスの財産を上回るプラス財産がある場合

被相続人にプラスの財産(不動産・預貯金など)とマイナスの財産(借金)の両方がある場合、成年後見人が「放棄することで本人の利益が損なわれる」と判断すれば、相続放棄を選択しません。そのため、成年後見の申し立てた親族が相続放棄を希望していても、成年後見人が相続放棄を選択しない結果になることがあるのです。。

例:被相続人に借金600万円・不動産(価値1000万円)がある場合。他の相続人が「不動産の維持管理が面倒なので全員で放棄したい」と考えても、成年後見人は認知症の相続人のために相続放棄を選択しない可能性が高い。

✅ 成年後見人が相続放棄を選択しやすいケース

被相続人に借金(マイナス財産)しかなく、相続放棄することが明らかに本人の利益になる場合

プラス財産はあるが、借金がそれを大幅に上回っており、相続すると本人が損をする場合

つまり、家族や親族が相続放棄を希望しているという事情で成年後見人が相続放棄を選択するのではありません。成年後見人はあくまでも「認知症の方(本人)の利益になる場合」に相続放棄を選択することになります

利益相反:親族が成年後見人として相続放棄できないケース

成年後見人は弁護士などが選任されることが多いですが、親族もなることができます。しかし、本人と親族とが「利益相反」の関係になる場合は、その親族は成年後見人として相続放棄の手続きを行うことができません。

具体例:利益相反が問題になるケース

父(A)が亡くなり、多額の借金があった。母(B)が認知症で、子(C)がいる。Cが母の成年後見人として選任され、母の代わりに相続放棄をしようとした場合。
→ Bが相続放棄をすることでCの相続分が増加する関係にあるため、利益相反行為となり、CはBを代理して相続放棄の手続きをすることができない。この場合は、特別代理人を選任するか、弁護士・司法書士など第三者の専門家が成年後見人になる必要がある。

実際に成年後見人として選任されているのは約8割が弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門家です。これは成年後見の申立て時に、成年後見人の候補者を裁判所に一任していることが多いためです。そのため、親族後見人が認められるケースは2割程度にとどまるとされています。

3か月の期限と後見人選任のタイミング問題

相続放棄の期限は「相続の開始を知った日から3か月以内」ですが、認知症の方の場合は少し異なります。

成年後見人が選任されている場合、熟慮期間の起算点は「成年後見人が相続の開始を知った日」から3か月となります(民法917条)。つまり、後見人が選任されるまでは熟慮期間がスタートしないと考えてよいでしょう。

⚠️申立ての準備から成年後見人選任まで数か月かかる

成年後見人の選任申立てはすぐにできるようなものではありません。申立書や本人の診断書など準備するものは様々あります。また、家庭裁判所への申立後、成年後見人が選任されるまでも時間がかかります。そのため、申立の準備を始めてから実際に成年後見人が職務を行うことができるようになるまで数か月かかるとみた方がよいでしょう。

債権者から相続放棄の方針について問い合わせがある場合には、成年後見を申し立ててから相続放棄をする予定なので、実際に相続放棄をするのは数か月先になる、と伝えておいた方がよいでしょう。

まとめ

重度の認知症の相続人は意思能力がないため、自分で相続放棄できない

成年後見人を選任し、後見人が代わりに相続放棄を申述する手続きが必要

後見人はあくまで「被後見人の利益を守る」立場のため、プラス財産がある場合は放棄を認めないことがある

他の相続人が成年後見人になると利益相反となる場合がある

熟慮期間は「成年後見人が相続開始を知った日」から起算される

成年後見人が選任され相続放棄をするまでには時間がかかる

認知症の相続人がいる場合の相続放棄は、通常より手間がかかります。「成年後見人を立てれば解決する」と思っていても、成年後見人が相続放棄を認めないケースや、利益相反の問題で親族が動きづらいケースもあります。早めに弁護士に相談して方針を決めることをお勧めします。

認知症の相続人がいる場合はお早めにご相談を

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