賃貸マンションの相続放棄|遺品整理はいつから?家賃を払うと放棄できない?
こんなお悩みはありませんか?
「親が賃貸マンションに住んでいた。相続放棄したいが、片付けはしなければいけないの?」
「大家さんから遺品の撤去を求められているが、断っていいのかわからない」
「家賃が滞納されている。払ってしまったら相続放棄できなくなる?」
賃貸物件に住んでいた方が亡くなった場合、残された家族には大家や管理会社からさまざまな要求が届くことがあります。焦って対応してしまうと、相続放棄をする場合には本来必要のない対応をしてしまったり、最悪の場合は相続放棄が無効になるリスクもあります。
この記事では、賃貸物件に関する相続放棄の注意点を「遺品整理」「家賃」「解約」の3つに分けて、弁護士が具体的に解説します。
📋 この記事でわかること
相続放棄をすれば賃貸に関する義務は原則なくなる理由
遺品整理のOK行為とNG行為(単純承認になるボーダーライン)
滞納家賃を「払ってしまう」と相続放棄できなくなるリスク
賃貸契約の解約が「単純承認」になる理由
連帯保証人になっている場合の例外と対処法
目次
相続放棄をすれば、賃貸に関する義務は原則なくなる
相続放棄をすると、「初めから相続人ではなかった」ものとみなされます(民法939条)。プラスの財産も、マイナスの財産(借金・未払い家賃・原状回復義務など)も、すべて承継しないことになります。
したがって、相続放棄をする予定であれば、次のことをする必要はありません。
✅ 相続放棄をすれば不要になること
・滞納家賃の支払い
・退去時の原状回復費用の負担
・遺品整理・部屋の片付け
・賃貸借契約の引き継ぎ
大家や管理会社から「片付けてほしい」「家賃を払え」と求められることがありますが、相続放棄が完了していれば断ることができます。その際は相続放棄申述受理通知書(または受理証明書)を提示して、放棄が完了している旨を伝えましょう。相続放棄が完了していない場合には、これから相続放棄をする予定である旨を伝えるとよいでしょう。
⚠️ただし「何をするか」には要注意
放棄が完了していても、一定の行為をすると「単純承認した」とみなされ、相続放棄が無効になることがあります(民法921条)。以下のセクションで詳しく解説します。
遺品整理などのOK行為・NG行為(単純承認のボーダーライン)
遺品整理などは、やり方によって相続放棄に影響する場合とそうでない場合があります。判断の基準は「財産としての価値があるものを処分・取得したかどうか」です。
❌ やってはいけないNG行為(単純承認になるリスクあり)
・貴金属・ブランド品・美術品などの価値の高い遺品を持ち出す・売却する
・被相続人名義の預貯金を引き出して家賃やその他の支払いに充てる
・家電・家具など価値のある家財道具を処分する
・賃貸借契約を自分で解約する(後述します)
✅ 問題になりにくい行為
・明らかなゴミ(食品の残り、空き缶など)の処分
・経済的価値のない古着・日用品の軽微な形見分け
・電気・ガス・水道会社へ被相続人が亡くなった旨の連絡
ただし、「価値があるかどうか」の判断が難しい場合もあります。「これは価値がない」と自己判断して処分したものが後から問題になるケースもあります。迷った場合は手を付けないことが最善です。
滞納家賃を「払う」と相続放棄できなくなる?
親が家賃を滞納していた状況で、大家から督促が来た場合、どのように対応したらよいでしょうか。
❌ 被相続人の財産(預貯金)から家賃を払う → 単純承認のリスク大
相続財産を処分したとみなされ、単純承認が成立する可能性があります。相続放棄ができなくなり、借金も含めたすべての財産を承継するリスクがあります。
⚠️自分の財産から家賃を払う → 慎重な判断が必要
被相続人の財産ではなく、自分のお金で支払う場合は、一般的には単純承認にはならないと解釈されています。しかし、相続放棄を予定しているのであれば、本来は大家に対して相続放棄をするので支払えません、と伝えればよいことになります。それにもかかわらず、家賃を支払うことは単純承認したのだと誤解される可能性があります。支払う前に弁護士に相談した方がよいでしょう。
滞納家賃の督促が来ても、相続放棄を検討している段階では絶対に被相続人の財産から払わないでください。まず弁護士に状況を伝えてから対応を判断することが重要です。
相談例
「親が亡くなり、賃貸の家賃を3か月分滞納していた。大家には良くしてもらっていたので支払いたいと思っている」→ 単純承認が成立する可能性があるので要注意です。相続放棄を予定しているのであれば、支払いの前に弁護士に相談してください。
賃貸借契約を自分で解約してはいけない理由
大家から「早く解約手続きをしてほしい」と求められることがあります。しかし、相続放棄を検討している段階で相続人が賃貸借契約を解約するのは危険です。
その理由は、賃借権(賃貸物件を借りる権利)は相続財産の一つだからです。相続人が賃借権を処分(解約)する行為は、財産を処分したとみなされ、単純承認が成立する可能性があります(民法921条1号)。
そのため、相続放棄を予定しているのであれば、賃貸借契約を解約してはいけません。
また、大家さんから「残置物(荷物)の放棄書にサインしてほしい」と頼まれることもありますが、これに応じることも「財産の処分」とみなされるリスクがあるため、慎重な判断が必要です。
次の入居者に賃貸したい大家としては、法的には次のように進めることになります。
①各相続人に意向を確認する(相続するのか相続放棄するのか)
②相続人全員が相続放棄すると、大家が家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる
③相続財産清算人が選任されれば、清算人との間で解約・明け渡しの手続きをする
相続財産清算人の役割や手続きの詳細については、相続人全員が相続放棄した場合の解説記事も参考にしてください。
大家に迷惑をかけたくない気持ちはわかりますが、安易に書類に署名したり解約手続きを行ったりする前に弁護士に相談してください。
注意:連帯保証人になっている場合は義務を免れない
賃貸借契約で注意しなければならないことがあります。
賃貸借契約では、借主の親族が連帯保証人になっていることがよくあります。
被相続人の賃貸借契約について、自分が連帯保証人になっている場合は、相続放棄をしても連帯保証人としての責任は残ってしまうのです。
これは、連帯保証契約が、賃貸借契約とは別の契約関係であるためです。
相続放棄によって「相続人としての義務」からは解放されますが、「連帯保証人としての義務」は消えません。
❌ 連帯保証人の場合は放棄しても残ること
・滞納家賃の支払い義務
・明け渡し、原状回復に関する責任
「自分が連帯保証人かどうか」は、契約書を確認してください。確認が難しい場合や、連帯保証人であった場合の対応については弁護士にご相談ください。
まとめ
この記事の要点を整理します。
▶相続放棄が完了すれば、家賃・遺品整理・原状回復の義務は原則不要
▶価値ある遺品を処分・持ち出しすると単純承認のリスクが高い
▶被相続人の預貯金から家賃を支払うのは単純承認のリスクが高い
▶賃貸借契約を解約する行為は単純承認のリスクが高い
▶連帯保証人になっている場合は相続放棄しても保証責任が残る
▶迷ったら「何もしない・触らない」が基本。早めに弁護士に相談を
賃貸物件がある相続では、善意から行った行動が相続放棄の障害になることがあります。大家や管理会社から急かされても、まず弁護士に状況を伝えてから対応方針を決めることをお勧めします。
賃貸の遺品や家賃のことで動く前にご相談を
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