2024.06.04更新
交通事故で慰謝料をいくらもらった?症状別の相場や適切な慰謝料をもらうためのポイントを紹介!
目次
交通事故に遭った被害者の方は、ほとんどのケースで加害者に対して慰謝料を請求でき、そのことを皆さまもよくご存知かと思います。しかし、慰謝料の計算方法や相場を理解していなければ、適切な補償を得られない可能性があります。また、慰謝料以外にも賠償金として請求できる費目が存在しますが、それらについて知らなければ、請求をしないままに示談してしまう可能性があります。本記事では、まず慰謝料の種類と複数存在する基準について解説していきます。また、慰謝料以外にも賠償金に含まれる費目についても解説します。
交通事故に遭ってしまった方や、身近な人が事故に巻き込まれてしまった方は、ぜひ参考にしてください。
交通事故の慰謝料の種類
慰謝料とは、交通事故の被害者の精神的苦痛に対する賠償のことをいいます。交通事故の慰謝料は、つぎの3種類に分けて検討されています。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)
入通院慰謝料は、交通事故によって入院や通院をした場合に、その期間や日数などに応じて支払われる賠償金です。交通事故で負傷し、そのために入院や通院をされた方であれば、まずこの慰謝料が認められることになります。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、交通事故によるケガが原因で後遺症が残った場合に、そのことで被った精神的苦痛に対する賠償金です。交通事故で負傷した際、相当の期間治療を継続したものの、何らかの症状が残存してしまう場合があり、これを後遺症といいます。後遺症については、後遺障害の等級認定制度が設けられており、被害者の残存症状が後遺障害に該当すると認定された場合には、認定された等級に応じて後遺障害慰謝料を請求することができます。
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、交通事故で被害者が死亡したことで、被害者(及びその遺族)が被った精神的苦痛に対する賠償金のことです。亡くなった本人に認められるものとその遺族に認められるものがあります。
交通事故の慰謝料の計算方法
これらの慰謝料には、下記の3通りの計算方法があります。このうちのどれを採用するかで慰謝料の金額は大きく変わります。
自賠責基準
自賠責基準は、自賠責保険会社が自賠責保険金を支払う際に用いられる基準です。通常は、つぎに述べる任意保険基準や弁護士基準(裁判基準)に比べると低い金額となります。
任意保険基準
任意保険基準とは、それぞれの任意保険会社が設定している基準です。一般的には、通院の終了後に相手方の任意保険会社から賠償金が提示されますが、その際の慰謝料は自賠責基準か任意保険基準に基づいて算定された金額であることがほとんどです。任意保険基準で計算された慰謝料は、自賠責基準で計算された金額よりも高く、弁護士基準で計算された金額よりも低くなる傾向にあります。
弁護士基準(裁判基準)
弁護士基準(裁判基準)とは、過去の裁判例をもとに設定された基準です。裁判を起こした場合に認定される可能性のある金額となります。3つの計算方法の中で慰謝料が最も高額になる可能性が高いです。弁護士が交渉する場合にはこの基準を前提とすることになります。
慰謝料の相場と事例
次に、慰謝料の相場を事例別に解説します。
頚椎捻挫・腰椎捻挫(非該当)の場合
交通事故でもっとも典型的な通院は、停車中に後ろから追突され、頚椎捻挫・腰椎捻挫を負いリハビリ通院するというものです。リハビリ通院をして後遺症が残存しなかったか、もしくは後遺障害申請をしたが非該当であったことを前提にします。この場合には、後遺障害が存在しないため、慰謝料は入通院慰謝料のみとなります。弁護士基準(裁判基準)の計算では、赤い本の別表Ⅱを採用することになります。週に数回リハビリ通院を継続していた場合、通院期間が1か月で19万円、3か月で53万円、6か月で89万円が弁護士基準(裁判基準)の慰謝料となります。なお、1か月で15回通院した場合、自賠責基準では4300円×15日×2=12万9000円が慰謝料となります。
頚椎捻挫・腰椎捻挫で14級が認定された場合
頚椎捻挫・腰椎捻挫で6か月間リハビリ通院をし、頚部痛・腰部痛などの神経症状について後遺障害等級14級9号が認定された事例を前提にします。この場合には、先ほど述べたとおり、まず6か月の通院慰謝料が弁護士基準(裁判基準)で89万円となります。また、こちらの事例では14級の後遺障害慰謝料も認められることになり、弁護士基準(裁判基準)では110万円となります。なお、自賠責基準での14級の後遺障害慰謝料は32万円となります。
骨折などを負った場合
骨折などを負った場合は、通常、赤い本の別表Ⅰを採用します。別表Ⅰは軽い傷病を前提とする別表Ⅱに比べ慰謝料の金額が高くなっています。たとえば、1か月入院した場合、赤い本別表Ⅰでは、53万円が弁護士基準(裁判基準)となります。これに対して、自賠責基準では、4300円×30日=12万9000円が慰謝料となります。さらに、後遺障害が認定された場合には、後遺障害慰謝料も認められることになります。骨折後に痛みが残存するなどして14級9号が認定された場合には、先に述べたとおり弁護士基準(裁判基準)では110万円の後遺障害慰謝料が認められます。また、骨折箇所の癒合不全・不正癒合などが原因で痛みが残存しており、他覚的所見があることから12級13号が認定された場合には、弁護士基準(裁判基準)の後遺障害慰謝料が290万円まで増えます。なお、自賠責基準での12級の後遺障害慰謝料は94万円です。
死亡事故の場合
事故から死亡までの間に入通院期間があれば、入通院慰謝料が認められます。この場合、弁護士基準(裁判基準)では、先にみたとおり重い傷病として赤い本の別表Ⅰを採用することになるでしょう。つぎに、死亡事案では死亡慰謝料が認められます。弁護士基準(裁判基準)、すなわち赤い本では、一家の支柱の場合2800万円、母親・配偶者の場合2500万円、その他(独身の男女、子供、幼児等)の場合2000万円から2500万円としています。この金額には、被害者本人のほか親族の慰謝料も含まれています。自賠責基準では、本人の慰謝料が400万円、遺族の慰謝料は、請求権者1人の場合に550万円、2人の場合に650万円、3人の場合には750万円としています。さらに、被害者に被扶養者がいるときは200万円を加算するものとされていますが、いずれにしても、自賠責基準は弁護士基準(裁判基準)に比べて相当に低い金額となります。
慰謝料以外に請求できる費目
交通事故の被害者は、慰謝料以外にも加害者側にさまざまな費目を請求できます。ここでは、慰謝料以外に請求できる主な費目について説明します。
入院雑費
入院雑費とは、入院に際して必要となるさまざまな費用のことを指し、パジャマ代、おむつ代、テレビカード代などが含まれます。入院1日あたりの費用として、自賠責基準では1100円、弁護士基準(裁判基準)では1500円とされています。任意保険会社の提示では、自賠責基準を採用するか、実際の領収書に基づく金額が多いと思います。
通院交通費
通院交通費は、通院のために必要となった交通費のことで、公共交通機関の利用金額や自家用車のガソリン代、タクシー代や病院の駐車場代などを合理的な範囲内で請求できます。実務上、ガソリン代は通院先までの距離を1km15円で計算しています。なお、タクシー代は、ケガの程度などの事情から他の交通機関での通院が困難と認められる場合(必要性・相当性がある場合)にのみ請求することができますので、注意が必要です。
付添費
入院付添費と通院付添費があり、医師の指示があり付添が必要な場合や、被害者が幼児の場合などに認められます。弁護士基準での入院付添費は1日6500円、通院付添費は1日3300円とされています。
休業損害
交通事故後、症状固定までの間に受傷により収入が減少した場合に認められます。給与所得者の場合には休業損害証明書を勤務先に作成してもらうことになります。個人事業主の場合には確定申告書などを相手方保険会社へ提出することになります。休業損害は、骨折などの重い傷病の場合には比較的緩やかに認められますが、頚椎捻挫・腰椎捻挫などの一般的・客観的に軽い傷病の場合には、事故から一定期間が経過すると、休業の要否が争われやすい傾向にあります。なお、被害者が同居の家族のために家事をしている場合は、主婦(家事従事者)の休業損害が認められ得ることに注意が必要です。
逸失利益
被害者が死亡した場合及び後遺障害が認定された場合には、逸失利益が認められます。逸失利益とは、死亡または後遺障害を負ったことにより、将来にわたって失われる(見込みの)収入のことです。逸失利益の計算は、労働能力喪失期間や労働能力喪失率などを設定する必要があるため、専門的な知見が必要となります。
将来介護費
重度の後遺障害が残り、介護が必要になった場合には、将来介護費を請求できる可能性があります。実務上は、高次脳機能障害や遷延性意識障害などにより、相当に高い等級が認定された場合に認められています。将来介護費は日額の設定について争いになりやすく、やはり計算には専門的な知見が必要といえます。
適切な賠償金を獲得するためのポイント
最後に、適切な賠償金を獲得するためのポイントについて解説します。
適切・妥当な態様で医療機関に通院する
通院に関して争いになりやすいケースとしては、事故後しばらくしてから初めて通院する場合(初診遅れ)や、事故直後は通院したがブランク(中断・空白期間)がある場合を挙げることができます。このような場合は、交通事故と傷病・残存症状(ひいては通院)との相当因果関係を証明することが難しくなってしまうのです。交通事故と通院の相当因果関係が認められない場合は、通院をしても通院慰謝料が認められなくなりますし、後遺障害申請をしても非該当となる確率が非常に高くなります。
後遺障害の認定を受ける
適切な補償を受けるためには、適切な後遺障害等級認定を受けることが必要です。どのような後遺障害等級認定を受けたかにより、慰謝料や逸失利益の金額が大きく異なります。例えば、同じ14級の認定であっても、醜状痕による14級4号と神経症状による14級9号では、逸失利益が認められるか否かという点で賠償額に極めて大きな差が出ます。適切な等級認定を受けるためには、事前に専門家に相談しておくことが大変重要です。
弁護士に相談して弁護士基準(裁判基準)で計算する
先にご説明したとおり、相手方の任意保険会社は、自賠責基準や任意保険基準をもとに賠償金を提示してきますが、そのようにして提示された賠償金は、一見すると皆様が思っていたよりも高額かもしれません。しかし、一見良い内容に見える賠償金も、大半の事案では弁護士基準(裁判基準)に比べると低額であり、弁護士が介入することによる増額の可能性があります。本記事でご説明した慰謝料に関しては、任意保険会社の提示から倍以上の金額になるケースも珍しくありません。相手方の保険会社に対して被害者の方がご自身で交渉をなさっても、弁護士基準(裁判基準)までの増額にはなかなか応じてもらえないはずです。相手方の保険会社から賠償金の提示があった際には、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
交通事故に関することならせせらぎ法律事務所に相談を
弁護士法人せせらぎ法律事務所東京立川支所では、交通事故の慰謝料をはじめとする賠償金に関するご相談を受け付けています。初回のご相談は無料で承っており、事前のご予約があれば夜間のご相談にも対応できる場合があります。これまでに多数の交通事故案件を処理してきており、豊富な経験と潤沢な知識を活かしたサービスを提供しています。小さなことでも、まずはお気軽にお問い合わせいただけたら幸いです。
この記事の監修
弁護士代表
山下 南望(やました みなも)
この記事の監修
弁護士代表 山下 南望(やました みなも)
所属弁護士会 | 第二東京弁護士会 |
---|---|
登録番号 | 47576 |
経歴 |
|
投稿者: